院長ブログ

公費医療はグローバル経済のごちそうである

子宮頸がんワクチンの闇

予防医学という美名に隠れて生活習慣病やら骨粗鬆症などの病名が暴走し始めている感も無きにしも非ずの昨今ですが、ワクチン行政の動きも活発化していますね!

少し前に公費助成があるうちにと言って婦人科や内科、小児科が接種患者とともに狂想曲を演じた子宮頸がんワクチンを通してローバル市場経済と公費医療を考えてみました。

子宮頸がんのおさらい

「ヒトパピローマウィルス(HPV)が子宮頸がんの発症要因である」とドイツのハラルド・ツア・ハウゼン教授が1983年に発表しました。 彼はこの発見によりノーベル医学賞を受賞しています。

もちろん、HPV(ヒトパピローマウィルス)は、感染しても90%は個体の抗体獲得により自然治癒するありふれたウィルスです。 HPV感染患者の約10%が免疫寛容により持続感染状態になります。

その感染が10年以上続くと持続感染者の1%以下の者に細胞の異形成から癌変化を起こすと言われています。

つまり、HPV感染者の1000人に1人以下が5~10年の経過で子宮頸部異形成から上皮内癌に移行すると推測されます。(注1)

子宮頸がん検査の意義

癌に変化する経過が緩徐であるため、HPV(ヒトパピローマウィルス)持続感染のハイリスク患者は定期的な癌検診の励行で早期発見が十分可能であるとも言えます。

さらに早期発見すれば、現在の医療水準から治療成績は0期(上皮内癌)ではほぼ100%の5生率(5年間生存率)があり、 1期で85%、2期75%、3期55%、4期においてすら20%というのが5生率(5年間生存率)です。

上記の統計から推論すると頸がんのリスクファクターであるHPV感染と子宮頸部異形成のハイリスク患者をスクリーニングで拾い上げ、 もれなくフォローアップすれば、子宮頸がんは早期発見が可能であり、死亡率もかぎりなく0に近づけることができます。

日本の子宮頸がん検査検診率

一方、公費による検診事業は昭和30年代から一部自治体で始められていた子宮癌集団検診は1958年(昭和58年)に老人保健法による保健事業として行われるようになり、 子宮癌検診の全国的な統計が可能になりました。老人保健法により検診費用は国、県、市町村がそれぞれ費用の1/3ずつ負担していました。

しかし、平成10年(1998年)から癌検診の費用が一般財源化されたため、検診は各自治体の個別事業となり、自治体間で検診事業の取り組みに差異が生じてくるようになりました。

さらに、平成16年(2004年)に入って厚労省は「検診対象年齢を30歳以上から20歳以上に引き下げるが、検診間隔を1年から2年に延長する」という子宮癌検診事業の大幅改定を行いました。

確かに、検診率が80%を超える欧米諸国では費用対効果の面で2年に一度の検診制度を導入する傾向がありましたが、日本では欧米諸国と比し30%にも満たない受診率であり、まだまだ癌検診受診者数の向上に注力しなければならない時期にどうしてという疑問はありました。
(厚生労働省癌検診受診統計より)

まだまだ検診の普及率が低いこのような時期に適応年齢は拡大したが、検診間隔を延長するという日本の実情にまったくそぐわない、 むしろ理念とは真逆の制度改定です。

案の上、統計的にも平成16年(2004年)、大幅改定を行った時点を境に上昇しつつあった実受診者数は低下しています。  

がん検診の啓蒙活動

当然、日本で頸がんワクチンの接種で癌死亡率を低下できるという答は統計学的にはまだまだ結論はでていません。

しかし、子宮頚がんワクチンの認可以来、厚労省は接種無料などの経済的誘導策で若年層に頸がんワクチン接種の普及を図りました。

疾病理解に対する啓蒙活動を軽視した拙速な頸がんワクチン接種誘導策は「頸がんワクチンの接種をすると癌にならない」という世俗的誤解と熱狂を招き、今後、若年層ではただでさえ低い子宮頸がん受診率がさらに低下する可能性もでてきております。

一時の頸がんワクチンブームの中では開業医の地道な子宮頚がん癌検診の啓蒙指導よりも浅薄でセンセーショナルな噂的情報しか流さない無責任なマスコミは「頸がんワクチンを打った患者にがん検診をさらに勧める悪徳医」というような誤った情報を流すことも十分に考えられました。

公的予算には限りがあり、その予算を有効に使うには頸がんワクチン接種の促進より癌検診(HPV検査を含めた)受診率の向上であると私は今でも思っています。

ちなみに細胞診とHPVの併用検診は、子宮頚がんハイリスク群のピックアップとローリスク群の検診期間延長を可能にするでしょう。 それだけでも子宮頚がん検診に対する費用対効果を確実に低下します。


頸がんワクチンの話

もちろん、頸がんワクチン接種と子宮頸がん検診は車の両輪ですが、子宮頸がん死ゼロに向けてという善意の美名のもとに 感染者の99.9%が不要である子宮頚がんワクチン接種に限られた公費予算を振り分けるような著しくバランスを欠いた施策はとるべきではないでしょう。

頸がん撲滅という善意の美名のもとに行われている頸がんワクチン接種促進事業(子宮頚額ワクチン製造2社はいずれも外資系)が、将来、既接種未検診患者の重症化という禍根を残すことになるかもしれないし、 事実、急激な普及で接種人口が増え、頸癌ワクチン禍ともいうべき接種問題が起こりました。

これは厚労省の理念なき医療行政を長年臨床面で経験した実感からは当然起こるべくしておきた災いでしょう。 ただし、子宮頚がんワクチンに関する以上の意見は、パンデミックを起こす危険のある感染症ワクチン接種を 「声高に反対する」ワクチン接種医療拒否グルーブに組するものではないこと、さらにこのワクチン禍は頸癌ワクチンの製品的問題ではないことは念のため申し添えておきます。

頸癌ワクチン公費負担の違和感

私は子宮頸がんワクチンをパンデミック感染予防ワクチンと同列に扱い公金補助でまかなうことに違和感を覚えるだけです。

もちろん、子宮頚がんワクチンでHPV感染が防げるのではあれば、医学の進歩としては望ましいことであり、その恩恵を適切な対価で人類が受けることは当然です。 しかし、限られた公的予算のなかではその分配に関して公平な医療理念に基づいた接種トリアージを行わなくてはならないでしょう。


グローバル経済と医療

グローバル経済に基づく医療の価値創造は子宮頚がんワクチン接種事業以外でも医療のいたる所で行われています。

深く静かにグローバル経済に組み込まれていく医療の実態に多くの医療従事者は気付き始めていますが、自分たちもその一翼を担っているため、あからさまに声を上げることができないだけでしょう。

例えば、精神科において全く主観的な診断基準であるDSMによる病名の価値創造が進行し、精神疾患というレッテル貼りをすれば 患者のすそ野は限りなく広がっていく実態があります。 もちろん患者側の疾病利得という面もありますがレッテル貼りをされた彼らや彼女らは医療とくに薬物治療の対象になっていきます。

ADHDやPTSDなどアルファベットの並ぶ病名、あるいはうつ病患者が世の中にあふれかえっていますが、学力の向上や自殺率の抑制に寄与している実感は私にはありません。 ただ、抗精神薬の開発ラッシュで新薬は旧約の10倍程度の薬価がついています。

また、メタボ検診と言わる内科分野の予防医学は莫大な薬物治療市場を創造しましたが、患者のQOLが向上しているかどうかの判断は将来の課題であり、今もメタボ検診の評価は揺れ続けています。

病気やその予防という善意の美名に隠れて、医療におけるグローバル市場経済は、製官医の強固なトライアングルにより不安という人の感情を煽りながら広がり続けるでしょう。

現在、純粋に日本資本の製薬会社は少なくなり、製薬会社はグローバル企業として成長を続けています。 医療従事者は自らがその価値創造の一翼をどこまで担っているのか常に自らの検証が必要です。

我々が医師としての矜持をなくせば、いたずらに不安を煽り、不安を持った人たちへ錬金術のように拡大した病名を振りかざし、 医療はさらに強欲なグルーバル市場経済に簡単に組み込まれていくでしょう。

それは医療における善意の欺瞞であり、性善説に基づいた医師・患者関係は崩壊し、将来、医療は契約と履行の商取引へと変貌するでしょう。 もちろん、そうした事態は国民皆保険の崩壊とも言える状態です。

今後、製官医のトライアングルはますます強欲になっていきます。不安創造医療の本格的な幕開けはもう始まっています。

今後の医療にとって何が正解なのかはAIが回答してくれるのでしょうか?

この記事はHPVワクチンが無料の定期接種になり、接種者があふれかえり、マスコミや接種後障害団体がワクチンの接種後障害だと声たかだかに叫びだしたころある雑誌に投稿したものです。その後、HPVワクチンは2018年6月の今でも積極推奨されておりません。おまけに世界ではガーダシル9という9価の抗ウイルスワクチンが発売されておりますが、日本では申請をだして2年以上認可されていません。ボタンの掛け違いが世界標準から遅れ、ここまでいびつな形となったワクチン行政は後の世で必ず検証されることでしょう。
(注1) 罹患率では0.1%ですが、統計的な生涯の累積子宮頸がん罹患率は1%となります。
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

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