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院長ブログ

日本の安楽死の現状

日本の安楽死の現状

自殺と安楽死の違い
どちらも自らの意思で死の時期を決めるという意味では違いはない。

ただ、自殺とは周りの者にとっては喪失感しかない自分勝手な死であるが、安楽死は近くにいる者も納得した死であるため、残された者にとっては心理的負担は少ない。

ところで日本では 自殺の定義として「24時間以内に発見されて、遺書を有すること」である。もちろん、この定義から外れた自殺も多いと思われる。興味のある方は以下のリンクへ
日本の自殺者について考察してみる

日本では安楽死は今のところ法律で認められていないので、自殺の中に含まれるている数もあると思われる。もちろん、その数は明らかではないが、平成19年以降、80歳以上の自殺者数を警察庁が発表している。その数はほぼ毎年、2500人前後である。その数が本来は超高齢者の安楽死したい実数に近いのではないかと思われる。つまり、安楽死希望者はこの数以上にいる。私も時々、高齢の患者さんから、「長生きしすぎた。」、「早くお迎えがきてほしい。」という言葉を聞くことがある。

日本の法律において本人はもちろん自殺も安楽死も犯罪には問われない。しかし、他人がその死を助けた場合、幇助者に対しては、自殺も安楽死も法律的には同様に取り扱われる。自殺を助けると自殺幇助罪である。安楽死でも同じでそれを助けた場合は自殺幇助であり、家族の同意があっても本人の同意がない場合は殺人罪となる。

最近は尊厳死と呼び、自らの意思で尊厳ある死を迎えることを希望する方々もいる。
日本尊厳死協会

苦痛を積極的に取り除いた結果「死」を迎える、あるいは積極的な延命治療をせず死を迎える。この二つは尊厳死であり、積極的に死を早める処置をするのが字義通りの安楽死であると考えるのが一般的である。もちろん日本の法律では両者とも今は認められていない。

 

統計で見る高齢者像

2016年に男性80.98年、女性87.14年と平均寿命は延びたが、推計の健康平均寿命は、男性72.14年、女性74.79年と言われている。平均寿命との差がいわゆる健康でない期間で男性では8.84年、女では12.35年となる。

単独世帯は1960年に16%だったものが、2015年には35%まで増加した。1970年には高齢者の80%が「その他の親族世帯」すなわち三世代世帯などと同居していた。ところが、2015年には41%に半減している。それに伴い老夫婦のみの核家族世帯は12%から35%へと増加している。さらに高齢者の単独世帯も6%から18%へと増加してる。

つまり、お一人様で誰にも最後を看取られること無く死を迎える高齢者数も激増している。結果として高齢者の異常死における解剖が増えている。
推計ではあるが東京都内だけで一人暮らしの孤独死数は下図のごとく10年で倍増している。

もちろん、望んでない死を迎えた人もあろうが、高齢者が消極的な安楽死を望んだ場合、今の日本の現状では孤独死も選択枝にはいるであろう。

日本は今、世界でも類をみない超高齢化社会を迎えているが、次の世界への旅立ち準備は法整備においては何も整っていない。

 

安楽死先進国オランダの歩み

この法律ができた背景にはオランダには『人は自らの命を絶つ権利があり、尊重されるべきである』という考え方が根底にある。

2002年に安楽死法が施行されて以来、2015年には5516件(年間死亡者数の約4%)が安楽死で亡くなっている

安楽死の施行は安楽死幇助の許可を与えられている医師が患者が安楽死の基準を満たすと判断した場合にのみ行える。

上図は2010年前後の各国の病院死割合である。
やはり、安楽死を法制化しているオランダでは圧倒的に病院死が少なくなっいる。

しかし、オランダでは新たな問題が起こりつつある。それは安楽死の適応範囲の拡大である。がん末期の苦しみから患者を救うためという理念でできた法律であるが、その後、終末期の枠が外され、精神的苦痛が適応範囲となった。

そのため、「歩き出すとすぐ転んでしまう。でも車椅子は利用したくないし、入院、入所も嫌」という高齢者が望みどおりに安楽死した事例や認知症になり安楽死した事例など、今の日本では確実に殺人となる案件が安楽死として容認されてきている。

安楽死先進国オランダの行きつく先がどこなのか、一抹の不安もある。

 

尊厳死が容認されている国々

延命治療を拒否し、終末期医療に関してのみ自ら死の時期を決める考え方として「尊厳死」がある。もっとわりやすく言えば寿命を縮めるのが安楽死であり、寿命を延ばさないのが尊厳死である。

回復する見込みが全くない状況においても、生命維持装置によって命を保つことが可能になったのが現在医学である。しかし、延命治療は本人にとっては非常に大きな苦痛やストレスになる可能性がある。さらに医療費の負担も膨大なものとなる。そのような延命治療は拒否し、人間の尊厳を保ちながら死を迎えるという意味で「尊厳死」という言葉を使う。

尊厳死は、米国では「自然死」と同義である。ほとんどの州で、「患者の人権」として、リビングウィル(生前の意思表示)に基づく尊厳死あるいは自然死が法律で認められている。英国、ドイツやフランスでもリビングウィルは法制化されている。

しかし、日本では未だに法整備化はされていないため、医療現場ではどうような対処をすればいいのか戸惑いがある。それは、過去に「尊厳死」あるいは「安楽死」と認められてもおかしくない事例で医師が犯罪に問われたことが医療界において深い傷跡として残っているからである。(東海大付属病院事件川崎協同病院事件など)

アメリカでは、1994年、オレゴン州で「医師による自殺幇助」が法律によって認められたが、まだまだ国民全体の理解は得られていない。2008年にワシントン州において安楽死は合法化され、さらにモンタナ州やバーモント州、ニューメキシコ州においても容認された。現在では5つの州で合法化されている。

しかし、アメリカでは「医師による自殺幇助」は低学歴、貧困層のいわゆる社会的弱者や精神的疾患の患者さんへの乱用が懸念され、全面的な安楽死解禁とはなっていない。

 

世界で初めて安楽死が許されたスイス

オランダは自殺先進国であるが、世界で初めて法律で「自殺幇助」が認められるケースを定めた国家はスイスである。

「自殺を個人的な理由で教唆もしくは補助し、結果としてその人物が自殺してしまった場合、5年以下もしくは罰金刑に処す」と言う法律を根拠に逆説的にその要件を満たさない場合は違法ではないと言う法解釈を適法とした。そのため、1942年から医師による自殺幇助を認めている。自殺を幇助する医師は個人的な医師患者関係はなく、本人の意志よる自殺であることを証明する必要がある。安楽死の長い歴史の中で、スイスの安楽死支援組織であるディグニタスは、違法な自殺幇助ではない事を証明できるプロセスを経験と知恵で確立させた。

基本的には、「治療困難な病気の末期状態」or「病気や障害により、普通に生活するのに著しい不具合」or「病気などによって常日頃から耐え難い苦痛を味わっている」などの条件に当てはまった場合に限られている。

安楽死のため、スイスに出かけるツアーもあるが、賛否は分かれている。

 

現在、安楽死を認めている国

他人による積極的安楽死を法律で認めている国
スイス – 1942年
アメリカ(オレゴン州) – 1994年「尊厳死法 (Death with Dignity Act)」成立
オランダ – 2001年「安楽死法」可決
ベルギー – 2002年「安楽死法」可決
ルクセンブルク – 2008年「安楽死法」可決
アメリカ(ワシントン州、モンタナ州) – 2009年
アメリカ(バーモント州) – 2013年
アメリカ(ニューメキシコ州) – 2014年
アメリカ(カリフォルニア州) – 2015年
カナダ – 2016年

今後の日本の安楽死は?

死の権利が叫ばれている昨今、日本では日本尊厳死協会など「安楽死」や「尊厳死」に関する議論は巷では高まっているが、政府は法整備に重い腰を上げようとしない。

しかし、日本は世界でも類を見ない高齢者が25%を超えた超高齢社会である。しかも、医療費抑制のため、在宅療養を推進している現状で、老々介護の悲しい結末を耳にしない日はない。国民にだけこのような悲惨な結末を迎える可能性を強いて、精神的、肉体的、金銭的負担を押しつけ、最後の尊厳を保つ権利の法整備は放置している。近代国家として欠陥国家ともいえる無責任体質である。

法的議論の土台を早急に作るべきであろう。

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