日常から医療の話まで院長の徒然日記

風邪のウイルス

風邪のウイルス

ライノウイルス:
多数の種類があり、また変異も多いウイルスのため、この風邪ワイルスのワクチンの開発は難しいようです。 普通の風邪の約30~40%はこのウイルスです。季節の変わり目の秋や春に発生する鼻風邪は主にこのウイルスによるものです。

鼻という意味のライノに感染するウイルスなのでライノウイルスといいます。

感染すると鼻、のどなどに上気道炎をおこします。しかし、ライノウイルスは33度以下で増殖するため、咽頭などの上気道でしか増殖しません。潜伏期間は1-3日です。症状は頭痛・のどの痛み、鼻詰まり(粘膜の炎症)、くしゃみなどが起こります。最初は水のような鼻水です。通常、発熱はなく、1-2週間以内で軽快します。 濃いねばっこい黄色あるいは緑色のものに変化した場合、あるいはせきやたんがでる下気道炎 は 二次感染や他のウイルスを疑います。


コロナウイルス:
4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1が主に人に感染します。 この4種類のウイルスは1960年代にHCoV-229E、HCoV-OC43が、2000年代に入ってHCoV-NL63とHCoV-HKU1が同定されました。 今では 風邪の10~15%(流行期35%)はコロナウイルスと言われています。あと2種類は 重症化傾向のあるヒトコブラクダが保有宿主の 中東呼吸器症候群(MERS)【 当時、2,494人の感染者のうち858人が死亡しました(致命率34.4%)】 や中国の野生コウモリ(キクガシラコウモリ)が保有宿主の 重症急性呼吸器症候群(SARS)【当時、 8,069人の感染者のうち775人が重症の肺炎で死亡と言われています(致命率9.6%)】 です。現在、この二つの動物由来コロナウイルスはヒトからヒトへの伝播は限定的であると考えられています。 しかし、動物由来のMERSやSARSは致死性肺炎を高い確率で起こします。

以上NID 国立感染症研究所のコロナウイルスページより

感染するとまず上気道感染( 頭痛・のどの痛み、鼻詰まり、くしゃみ など)を起こし、次に下気道感染(せきやたんなど)に感染が進行する場合があります。さらに、下痢などの消化器症状を起こすこともあります。下気道感染は重症化すると発熱します。潜伏期間は 2-4日です。 通常はあまり重症化ないため、コロナウイルスはまだワクチンが開発されていません。

RSウイルス :
新生児・乳児が重症化しやすい呼吸器感染症を起こすウイルスです。新生児・乳児の細気管支炎・肺炎の原因となります。かぜのような軽い症状も含めて多くの子どもがかかります。 しかし、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因の一つとも考えられています。

パラインフルエンザウイルス:
パラミクソウイルスの1型,2型,3型,および4型となります。 喉頭気管支炎を起こし、その後、発熱,犬吠様咳嗽,嗄声,および吸気性喘鳴などの症状が起ります。小児では春や秋に保育所,小児病棟,および学校 で小規模なアウトブレイクを起こすことがあります。

アデノウイルス :
風邪ウイルスの中では 4,5日続く高熱や目、胃腸症状など多様な症状を起こし、重症化しやすいと言われています。 「プール熱( 咽頭結膜熱 )」や「はやり目( 流行性角結膜炎 )」などの夏風邪の原因ウイルスです。

エンテロウイルス:
ウイルスに汚染されたものを飲み込むことで感染し、消化管の中でウイルスが増殖します。通常は体の免疫機能がこの段階で感染を食い止め、症状はほとんど現れません。 最も軽い疾患としては夏かぜと呼ばれる発熱と上気道炎症状ですが、皮膚・粘膜の発疹、心嚢炎、またはウイルスが中枢神経へ進入すれば無菌性髄膜炎あるいは麻痺を起こすことこともあります。

コクサッキーウイルス:
上気道感染症状も起こしますが、手足口病の主な病原ウイルスとしてよく知られています。(手足口病: 乳児や幼児によく見られる 手の平、足の裏、口内に水疱を起こす感染症)

コクサッキーウイルスの名前の由来は1948年にハドソン川沿いの町、コクサッキーの検体から最初に同定されたことからです。 2007年には中国東部で800人以上が感染し、 200人以上の子供が入院して26人が死亡した アウトブレイクを起こしてます。

エコーウイルス:
乳幼児がかかる夏風邪のウイルスです 。 熱は1~2日高熱が続いて一旦下がり、再び発熱するという2峰性の熱型と鼻水等より解熱後に頬や手足に細かい発疹がでるのが特徴です。 時には無菌性髄膜炎を起こすこともあるので注意が必要です。

その他の病原体:
風邪症状を起こすウイルスは他にもたくさんあります。また風邪の10%程度はマイコプラズマやクラミジア、インフルエンザ桿菌などウイルス以外の病原体による上気道炎や肺炎もあります。

風邪は万病の元とよく言われますが、色々な病原体がDNAレベルまできちんと同定されたのは20世紀も後半です。新たなウイルスはこれからもまだまだ発見されます。また、ウイルスが一部地域や時期にアウトブレイクを起こしニュースソースになることもあります。 しかし、それらは医学の進歩で必ず克服できてきました。

現在、日本では感染症状況をほぼリアルタイムで把握できます

インフルエンザ流行レベルマップ(NID国立感染症研究所)
2020年第5週の定点当たり報告数は14.11(患者報告数70,076人NID)となり、前週の定点当たり報告数18.00より減少した。

インフルエンザ総合ページ(厚生労働省)

風疹発生状況 (風疹について厚生労働省)

麻疹について (厚生労働省)

感染症発生動向調査(IDWR) (NID国立感染症研究所)
医療の発達した現在でも病原体による感染症は日本国内で起っています。むやみやたらに感染症をおそれることはありませんが、ワクチンをはじめ感染予防措置はおこたらないようにすることが自分の身を守る最善策です。

100年前の世界的アウトブレイク・スペイン風邪

スペイン風邪は 1918年から1919年にかけて人類が遭遇したアウトブレイクからパンデミックになった新型インフルエンザです。
感染者は当時の世界人口の3割以上の約5億人(死者は5,000万人から1億人:致命率10~20%)でした。感染者が最も多かったのは高齢者ですが、青年層で多数の死者がでました。この原因としてサイトカインストームが推測されていますが、未だに結論は出ていません。
原因ウイルスは鳥インフルエンザウイルス由来のH1N1亜型と推測されています。つまり、それまでヒトに感染しなかった鳥インフルエンザウイルスが変異し、ヒトに感染したと分かってきました。 人類が抗体を持たない新しいウイルス感染であったこと (アウトブレイク)、衛生知識もまだまだ低かったこと(低い医学水準)、さらに 第一次世界大戦で大規模な人の移動(交通網の発達)があったことなどが重なり、アウトブレイクからパンデミックを起こしてしまいました。

サイトカインストーム:感染症や薬剤投与などにより,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行するこの状態

当時のアメリカ軍インフルエンザ感染治療施設
アウトブレイクは抗体のない集団では簡単に起こる

今やネット社会で情報が瞬時に伝わる時代になりました。そして流言飛語も100年前よりも満ち溢れる時代です。あなたの身を守るために正しい医療リテラシーを身につけましょう。

風邪ウイルス感染の機序:
かぜ症候群の大半は80~90%はウイルスが原因で、飛沫などに含まれるウイルスが気道内に入って気道粘膜に付着し、その周辺の細胞内に侵入しウイルスが増殖することで感染が起ります。

治療:
ウイルス性のかぜ症候群はインフルエンザ以外は直接増殖を抑える薬はありません。そのため、安静、水分・栄養補給で体力を落とさないようにして自身の免疫力を高め、治癒をめざすことが大切です。ウイルスに効果のない抗菌薬は 基本的には不要です。まずは鼻汁を減らす薬、解熱剤や効アレルギー剤、抗炎症剤などの使用で体力を落とさないための対症療法を行います。もちろん、扁桃などに二次感染を疑わせる炎症所見があれば抗菌薬投与が必要ですが、その場合は指示通り服用しなければ、耐性菌の問題がありますのでご注意ください。

予防:
流行期には人混みへの 不要な 外出は避けましょう。外出中は水などでうがいを兼ねて口を潤すこと、帰宅の際は手洗い、うがいの励行です。またうがい、水分補給、マスクなどで常に口腔内を適度に保湿しましょう。さらに咳やくしゃみが出る場合には人に飛沫を拡散しないように必ずマスクを着用し、鼻と口をティッシュや衣服で覆うなど咳エチケットに心がけましょう。
乳幼児や高齢者は体力(免疫力)も弱いので特に不要・不急の外出は避けましょう。

ちなみの2020年にCOVID19の感染で騒動になり、予防措置に皆さんが気をつけたため、インフルエンザの感染者も半分以下になりました。うがい・手洗いの徹底がいかにウイルス感染を予防できるかの証左です。

新型コロナウイルス( SARS-CoV2 )(病名はCOVID-19)に関する症例のまとめ:Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China

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