日常から医療の話まで院長の徒然日記

重症急性呼吸器症候群 (SARS)&新型インフルエンザ&中東呼吸器症候群(MERS)のこと

2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS: Severe Acute Respiratory Syndrome )の原因となった病原体が SARSコロナウイルスの感染症です。また、2012年に中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)として確認されたコロナウイルス性の感染症はMERSです。
どちらもコロナウイルス属ですが、 SARSとMERSは致死率の違いがあり異なる経過をとります。 また、その間に世界的大流行と言われた新型インフルエンザのパンデミックが2009年にありました。これら3種類の病原微生物について振り返ってみます。

重症急性呼吸器症候群 (SARS)について

SARS(重症急性呼吸器症候群)は、SARSコロナウイルスを病原体とする2003年に流行した 動物( キクガシラコウモリ )宿主由来の新しい感染症です。

SARSの発生源は?

2002年11月16日に中国広東省仏山市で最初の患者が見つかったと報告されました。その後、香港、北京などから感染した人の移動によって、世界中へ運ばれ拡大しました。 アウトブレイクは2002年11月16日から始まり、台湾の症例を最後に、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出されました。しかし、32の地域と 国にわたり8,000人を超える症例が報告されました 。

わが国では、集団発生期間中に報告のあった可能性例16例と疑い例52例すべてが、他の診断がつき取り下げられたか、あるいはSARS対策専門委員会でSARSの可能性が否定されました。

潜伏期間や消毒は?

潜伏期は2日~7日、最大10日間程度と推測されます。通常のウイルスと同様に潜伏期や無症状期には他への感染力はないかあったとしても極めて弱いと考えられています。
SARSコロナウイルスはエンベロープをもっているため、エタノール(アルコール)や漂白剤などの消毒で死滅します。

SARS感染が疑われるのは?

10日以内にMARS流行地域から帰国するか、又は10日以内にSARS患者の痰や体液に触れる等の濃厚な接触があった方で、 38℃以上の発熱、 せきまたは息切れ等の呼吸器症状がある方です。
しかし、現在、WHOが指定する流行地域はありません。

SARS感染の症状

急な発熱と呼吸器症状を主とします。しかし症状だけでは他にたくさんある感染症と区別がつかない場合が多いのが特徴です。例えば、毎年日本では、インフルエンザだけで年間1,000 万人前後の患者が発生していると推定されます。

SARSに対する予防法や治療法はありますか?

外出先から戻った時に手洗い、外出中も常にペットボトルにお水を入れ、喉を潤す。不要不急の場合は 人混みに行かない。
現在、SARS予防のためのワクチンはなく、世界各国で研究中です。
ウイルスによる肺炎に対しては全身状態の管理や呼吸管理などの症状を和らげる治療を行います。

現在、SARSが発生した場合、即応の検疫体制

国外でSARSの再流行が起こった場合、以下の(1)から(4)の対応を行う予定です。また、現在も、出入国者に対しては(5)の対応をしており、SARSコロナウイルスを保有している疑いのある動物については(6)の対応をしています。

(1)渡航に関する助言
SARSの流行地域へは、不要不急の旅行を延期するよう勧告を出します。

(2)質問票の配布
流行地域からの航空便について、機内で質問票を配布し、健康状態を確認します。

(3)体温測定の実施
発熱のある方を確認するため、サーモグラフィーや体温計により体温測定を実施します。

(4)入国後の健康状態の確認
SARSを治療している医療機関で働いている方など、SARS患者と接触のあった入国者については、入国後も一定期間(潜伏期間)、検疫所への体温等の健康状態の報告を義務付ます。万一異状を生じた場合は、検疫所からその入国者がいる都道府県等に通知します。また、通知を受けた都道府県等は、入国者に対して直ちに調査を行い、入院等の必要な措置を講ずることとします。

(5)出入国者に対する情報提供
WHOが流行地域の指定を行っていない段階でも、SARS患者と疑われる者が発生するなどの情報が入れば出入国者に対して注意喚起等の情報提供をいたします。

(6)動物などの輸入禁止
SARS類似コロナウイルスが分離された動物の輸入を禁止しています。

ブタ由来新型インフルエンザについて

2009年春頃から2010年3月頃にかけ、豚由来インフルエンザウイルスが変異して人への感染が確認された世界的に騒がれました。 始まりはメキシコで豚に流行していた豚インフルエンザウイルスが農場などで豚から人に直接感染し、その後、人から人へ感染する変異した新型ウイルスとして確認されました。

2009年4月にメキシコで3か所、米国で2か所において、いずれも局地的発生が確認されています。その後にはメキシコのメキシコシティ、米国のテキサス州とカリフォルニア州で発生が確認されました。

CDC(Centers for Disease Control and Prevention: アメリカ疾病管理予防センター)によるインフルエンザ・パンデミック重度指数(PSI)においては、カテゴリー1に分類されたパンデミックです。

WHOの発表では2009年1月から2009年8月29日までの死者2185人でした。最大死者数国は、メキシコではなくブラジルの577人、次にアメリカの522人と報告されています。

新型インフルエンザは流行初期にメキシコでの感染死亡率が非常に高いと報道され、大きな世界的にパニックをもたらしましたが、検証の結果はSARSの致命率より低いものでした。現在では、季節性インフルエンザとほぼ同等の致命率と判明しました。

日本でも当時は感染症予防法第6条第7項の新型インフルエンザ等感染症の一つに該当すると見なされ、感染者は強制入院の対象となったが、2009年6月19日に厚生労働省が方針を変更してからはこの扱いはなくなり ました。

新型インフルエンザ【A(H1N1)pdm09型】に対するインフルエンザワクチンは2010年には接種体制が整いました。さらに2015年 – 2016年冬シーズンからのインフルエンザワクチンはA型株2価とB型株2価の4価ワクチンになっています。

2009年には感染が疑われるケースは1,000以上にも及び、全てを把握することは不可能でした。そのため、WHO緊急委員会は「すべての国が、通常とは異なるインフルエンザのような症状や深刻な肺炎に対する監視態勢を強化する」ように勧告しました。

日本での2009年新型インフルエンザ感染状況
厚生労働省は、重症化や死亡した例などを除いて、新型インフルエンザかどうかを調べるPCR(遺伝子)検査を前例しなかっため、国内の正確な感染者数は不明です。その年のインフルエンザ罹患推定患者数(新型インフルエンザを含む)は 902万人超と国立感染症研究所が発表しました。また、累計死亡者数では203人が新型インフルエンザにより死亡としたとされています。

新型インフルエンザから身を守る知っておきたい感染予防策(厚労省)

中東呼吸器症候群(MERS:マーズ)について

2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS: Severe Acute Respiratory Syndrome )に続き、2012年に中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)として確認されたコロナウイルスによる感染症がMERSです。
患者から分離されたMERSコロナウイルスと同じウイルスが、中東地域のヒトコブラクダから分離されてたことから、ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスの保有宿主(動物)であり、感染源の一つとして疑われています。   

MERSの発生源は?

2012年9月以降、中東地域を中心にMERSと命名された動物(ヒトコブラクダ)由来のコロナウイルスによる人への感染です。
MERS者の発生が認められた流行国は中東地域の一部であり、具体的には次の7か国です(2017年7月7日現在)      
アラブ首長国連邦、イエメン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン            
韓国での発症例はありますが、日本ではまだ報告例はないようです。

なお、最新のMERSの発生状況は、WHO(世界保健機関) Disease Outbreak Newsのサイト
(http://www.who.int/csr/don/en/)で確認することができます。

潜伏期間や消毒は?

潜伏期間は約2〜14日です。 通常のウイルスと同様に潜伏期や無症状期には他への感染力はないかあったとしても極めて弱いと考えられています。
コロナウイルスなどエンベロープのあるウイルス(ちなみにノロウイルスはありません)であるMERSコロナウイルスは、エタノール(アルコール)や漂白剤等の消毒で死滅します。

MERS感染が疑われるのは?

14日以内にMERS流行地域から帰国するか、又は14日以内に患者の痰や体液に触れる等の濃厚な接触があった方で、38℃以上の発熱、 せきまたは息切れ等の呼吸器症状、下痢などの消化器症状がある方
また特に動物(ヒトコブラクダを含む)との接触の有無も確認が必要です。

MERS感染の症状

主な症状は、発熱、せき、息切れなどです。下痢などの消化器症状を伴うことも多いようです。
MERSに感染しても症状が現れない人や軽度の人もいますが、高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全など基礎疾患のある人で、重症化する傾向があります。中東地域からMERSの確定患者の致死率は約35%とされています。

MERSに対する予防法や治療法はありますか?

外出先から戻った時に手洗い、うがいの励行、外出中も常にペットボトルにお水を入れ、喉を潤す。不要不急の場合は 人混みに行かないように注意すること。
現在、MERS予防のためのワクチンはありません。
ウイルスによる肺炎に対して、全身状態の管理や呼吸管理などの症状を和らげる治療を行います。

どのようにしてMERSに感染するのですか?

主に、飛沫感染(咳やくしゃみなどによる)又は接触感染によります。

患者から分離されたMERSコロナウイルスと同じウイルスが、中東地域のヒトコブラクダから分離されてたことから、ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスの保有宿主(動物)であると推測されます。
また、家族間や、患者-他の医療機関受診者間、患者-医療従事者間など、濃厚接触者間での感染も報告されています。

2015年に韓国において入国症例を発端としたMERSの流行が韓国内の病院での院内感染でおこりました。
なお、日本国内のヒトコブラクダを調査した限りではMERSコロナウイルスを保有している個体は確認されていません。
ただし、飛沫感染する季節性インフルエンザと比較しても感染力は弱く、次々にヒ

MERSはヒトからヒトへ感染しますか?

海外の感染予防対策の実施が不十分な医療機関等においては、患者から医療従事者や他の医療機関受診者等に感染した例が報告されています。しかし、基本的にはヒトからヒトに感染することはありません。

流行地に行った場合に気をつけること

渡航前
糖尿病や慢性肺疾患、免疫不全などの持病(基礎疾患)がある方は、MERSに限らず、一般的に感染症にかかりやすいので、旅行の前にかかりつけの医師に相談し、渡航の是非について検討してください。
渡航前に現地の最新の情報を厚生労働省ホームページ、検疫所ホームページ、外務省 海外安全ホームページ、在外日本国大使館ホームページなどで確認してください。

渡航中
現地では、こまめに手を洗う、加熱が不十分な食品(未殺菌の乳や生肉など)や不衛生な状況で調理された料理を避け、果物、野菜は食べる前によく洗う、といった一般的な衛生対策を心がけてください。
咳やくしゃみの症状がある人や、動物(ヒトコブラクダを含む)との接触は可能な限り避けてください。
咳、発熱などの症状がある場合は、他者との接触を最小限にするとともに、

渡航後
MERSの発生が報告されている地域においては、咳やくしゃみなどの症状がある人との接触を避けること、さらに動物(ヒトコブラクダを含む)との接触も可能な限り避けることが重要です。

現在のMARSに対しての防疫体制

2015年1月21日から MERSは二類感染症に指定されています。
これにより、国内でMERSの患者が発生した場合、医師による患者の届出や、患者に対する適切な医療の提供等が、法律に基づいて行われます。

MERSに感染した疑いのある患者が見つかった場合、検査を迅速に実施し、感染の有無を確認できるよう、全国の自治体と検疫所にMERSウイルス検査のための試薬を配布して、検査体制を整備しています。

空港等の検疫所では、MERSの発生国からの入国者・帰国者でMERSに感染した疑いがある者(発熱、せき、下痢など)がいた場合、MERSコロナウイルスの検査や健康監視を行っています。

このほか、検疫所のホームページやポスターの掲示を通じて、渡航者や入国者・帰国者に対する注意喚起を行っています

厚生労働省では、引き続きWHO等を通じて最新情報を収集し、ホームページ等を通じて、国民の皆さんに情報提供していきます。

厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers.html
厚生労働省検疫所ホームページFORTH
中東に渡航する方へ<中東呼吸器症候群に関する注意>
https://www.forth.go.jp/news/2014/05071434.html<
外務省 海外安全ホームページ 広域情報
http://www.anzen.mofa.go.jp/
在サウジアラビア日本国大使館ホームページ
http://www.ksa.emb-japan.go.jp/j/index.htm

流行に目に見えない病原体(細菌やウイルスなど)を防ぐには

メイヨークリニックが提唱する見えない病原微生物に対する予防方法
*予防接種可能なら受けること
*頻回に充分に手洗いをすること
*新鮮な野菜と果物を含むバランスのとれた栄養
*充分な睡眠
*適度な運動
*人ごみを避けること

WHOが提唱する見えない病原微生物に対する予防方法
*口や鼻を触らない(ウイルスがボタン・ドアノブ・手すり・つり革などに付着ししている場合、素手で触り、そのまま鼻や目を触ると感染する可能性が高い)
*うがいをすること
*石鹸で手洗い
*症状のある人に近づかない
*部屋を換気し、温度・湿度を高めに保つ

手洗い・うがい・休息を励行しましょう。

そしてもう一度、センメルワイスの時代を振り返ろう

目に見えない病原体(細菌やウイルス)を拡散しないようにするには

熱やくしゃみ・咳のある場合は外出せず自宅待機
熱が続いたり、息苦しいようなら病院受診

熱や咳、くしゃみのある方は他人に飛沫が飛ばないようにマスク着用や咳エチケットを心がけましょう。

咳エチケット
◎マスクをする
◎咳・くしゃみの際はティッシュペーパーなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむける
◎使用したティッシュペーパーはごみ箱に捨て、手を洗うなど)を実行しましょう。


医学は見えない病原体と闘ってきました。そしてこれからも闘い続けます!

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