日常から医療の話まで院長の徒然日記

次亜塩素酸水のミスト噴霧は絶対にやめてください!

次亜塩素酸ってなに?

医学的には酸化作用のある消毒剤で大きく分類すると次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水に分けられます。

次亜塩素酸ナトリウム

一般名でハイターなどで知られる塩素酸系の漂白剤です。ノロウイルスが一時騒がれたとき、エンベロープのないノロウイルスはエタノールでは効かないのですが、次亜塩素酸ナトリウムはノロウイルスを失活させるので、器具消毒などに推奨されました。しかし、その次亜塩素酸ナトリウムも不安定な物質です。

わかりやすい例では 水道水には次亜塩素酸ナトリウムが添加されています。そのため魚などの飼育にそのまま用いることはできませんが、水道水を数時間日光にさらすだけでその主成分である塩素は分解します。

次亜塩素酸水

次亜塩素酸はHClO と表記することが多いですが、下図のように水素原子と塩素原子が酸素原子に結合した構造です。

このままではかなり不安定で水溶液中では早く分解するため、安定化目的でナトリウムを加え塩にしたのが最初に説明した次亜塩素酸ナトリウム(NaCLO)です。

ナトリウムで安定化させていない酸性電解水は不安定で、塩化水素を放出しながら分解していきます。

{\displaystyle {\ce {2HClO -> 2HCl\ + O2}}}

また、一部次亜塩素酸ナトリウムに酸性水溶液をまぜることによりできる酸性次亜塩素酸水ありますが、これは混合次亜塩素酸水と区別することもあります。

混合次亜塩素酸水を自作するのはアルカリ性溶液と酸性溶液をまぜるため、塩素が発生して危険です。絶対しないでください。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2236&dataType=1&pageNo=1

食品添加物としての次亜塩素酸水(酸性電解水)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9… https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08…

次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤を使った器具消毒) https://www.mhlw.go.jp/content/000617…

食品に添加できるくらいだから次亜塩素酸水は安全で次亜塩素酸ナトリウムとは全く別物であるという噂話がまかり通ってますが、次亜塩素酸水による食品の消毒も【次亜塩素酸水は、最終食品の完成前に除去しなければならない。】という規定のもとに使用されてい殺菌消毒剤です。有効性の判定としては塩素濃度を用います。

人体に付着して安全なものであるとは現時点では厚労省は認めていません。

腐敗と発酵は微生物が起こす現象ですが、微生物にとっては腐敗も発酵も同じ現象です。人類にとって有効な微生物の作用を発酵と定義し、有害なものを腐敗と定義しただけです。 同様に殺菌・消毒は微生物やウイルスなども含めて組織を壊し、失活させるという言葉の定義です。

殺菌剤や消毒剤が細菌やウイルスにだけ効いて、人間の組織は損傷しないということはありません。

濃度によっては人にとって非常に有害になる場合もあります。 急性毒性で起る場合はすぐに有害なものとわかるのですが、慢性毒性は疫学的長期観察が必要です。

たとえば、オゾンですがオゾンたっぷり森林浴といえば何か健康的なイメージですが、一定濃度のオゾンを吸引で鼻腔・喉・気管・肺など呼吸器組織のタンパク質を変成することが分かってきました。急性毒性としては5~10ppmの吸引曝露が持続すれば肺水腫から生命を奪う場合もあります。そのため、有人環境では日本産業衛生学会の許容濃度委員会が0.1ppmと規定しています。(オゾンの臭気は0.02ppm程度から感じます)   
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3545&dataType=1&pageNo=1

森永乳業の微酸性電解水(次亜塩素酸水)サイトQ&A

https://www.morinagamilk.co.jp/products/purester/faq/

https://www.morinagamilk.co.jp/products/purester/specialist/t_nishio.html

歯科領域では10年以上前から口腔洗浄に使っているところもありますが・・

10年ほど前の資料ですが、次亜塩素酸水が歯周病治療に良いとのことでかなり衆目を集めたことがあります。

その時の歯周病学会で結論は以下です。 『、日本歯周病学会としては安全性や有効性について 学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきであると考える。』
http://www.perio.jp/file/about_perfect_perio.pdf
それから10年以上経ちましたが、未だにその結論は出ておりません。

歯周治療の指針2015
http://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_plan2015.pdf

こちらは日本口腔機能水学会の使用ガイドラインです。
http://www.kinousui.com/about/guideline.html
咳嗽という文言はありますが、治療としてはでなく「含嗽による口腔内悪臭の除去」とのことです。もちろん噴霧はありません。

また、同じ学会の資料ですが、
http://www.kinousui.com/covid/newsletter_No.95.pdf http://www.kinousui.com/webnews/emergency202004.html

手指消毒の適正使用として 『本学会で発行している口腔機能水ガイドラインで使用法について詳しく説明しております。その中で手指の消毒では、次亜塩素酸水(酸性機能水)を用いた15秒間の連続流水処理でアルコール手指消毒剤(ウエルパス®)と同等の効果を示す2)としています。 よって、次亜塩素酸水をアルコール手指消毒剤と同じようにポンプ式の容器に入れ、同じ量を手にスプレーして擦り込み消毒しても同等の効果は期待できませんのでご注意ください。 次亜塩素酸水を手指衛生に用いる場合、次亜塩素酸水を流水状態として15秒間の手指洗浄を行わないと効果はありません。すなわち、この作業は石鹸で15~20秒間行う手洗いと変わらないため、次亜塩素酸水は石鹸の代替手段として用いられるものであり、アルコール手指消毒剤の代わりになるものではないことに留意する必要があります。』 と書いてあります。

イソジンという消毒剤がありますが、粘膜障害作用があるため最近ではうがいのため口腔内消毒には医学的に使いません。また、昔は喉が腫れたらルゴール液を喉に塗られましたが、今それをやる先生はほとんどいませんね! https://yoshimuraladiesclinic.everyday.jp/wp-content/uploads/2020/02/f5ff0c1dbb3d571c6adcb7f5649b7e0f.png

口腔内が危険がどうか何mgが適当かどうかの議論については歯科の先生にお譲りしますが、 ただ、医学的には肺は気体と液体間のガス交換をするための臓器であり口腔内よりももっと精緻で繊細です。 http://www.kms.ac.jp/~anatomy2/Histology22.pdf

「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート) 【経済産業省】

https://www.meti.go.jp/press/2020/05/…

「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート)【経済産業省】

https://www.meti.go.jp/press/2020/05/…

1500年頃に活躍した錬金術師パラケルススは「すべての物質は毒にも薬にもなる」という言葉を残しています。つまり、その使い方や濃度しだいで薬であると言われている物質が毒にもなります。 市販薬でも人によって副反応がおこるのと同じですね。

次亜塩素酸水ミスト噴霧に関してはすぐに分解して水になるから安全だとの話もありますが・・・

1.肺は繊細な臓器なので吸入で肺組織に損傷を与える可能性

2.ミストはエアロゾルになりウイルス感染の温床となる可能性

1については
肺の構造
http://www.kms.ac.jp/~anatomy2/Histol…

毒まき散らす加湿器の真実
http://www.ntv.co.jp/gyoten/backnumbe…

次亜塩素酸水のミスト噴霧は危険だ!(元大学教員,小波秀雄の個人サイト) http://konamih.sakura.ne.jp/blog/2020…

遅発性肺損傷を呈した塩素ガス吸入 2 症例の検討 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/20/7/20_7_390/_pdf#:~:text=%E5%A1%A9%E7%B4%A0%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%9A%B4%E9%9C%B2,%EF%BC%88ALI%EF%BC%89%E3%82%92%E7%99%BA%E7%97%87%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82   

噴霧ではないですが海外で1900年代にHCLOの細胞損傷をin vitroで確かめた論文は出ています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8070673/ https://portlandpress.com/biochemj/article/330/1/131/36923/Comparison-of-human-red-cell-lysis-by-hypochlorous    

「微酸性電解質ミストのラットに対する暴露試験」
https://yoshimuraladiesclinic.everyday.jp/wp-content/uploads/2020/06/IMG_20200605_0001.pdf
農薬として比較的安全な物であると推測できるが、 ラットとヒトの感受性の違いを考え「安全性を考慮して電解水の使用時には通常の農薬散布で用いるマスクを使用するなど吸入量を減らすことが必要である」「噴出口で大量のミストに暴露されてような場合は水道水などで眼を洗う事と、狭い温室で長時間の作業などによる過剰なミストの暴露が考えられる場合は、マスクの装着あるいは換気の必要性があろう」 との結論です。

化学物質のリスク評価について-よりよく理解するために(なぜヒトとラットは違うのか?)
https://www.nite.go.jp/chem/shiryo/ra/about_ra7.html

急性毒性はでないかもしれませんが、ミスト吸入で肺に影響でるのは数年後かも知れません。現代医学では消毒剤の吸入は医学的に安全なものと認められていません。

次亜塩素酸水ではありませんが、消毒薬の暴露で慢性閉塞性肺疾患が有意に増えたとの報告もあります。
Association of Occupational Exposure to Disinfectants With Incidence of Chronic Obstructive Pulmonary Disease Among US Female Nurses


2については
新型コロナウイルスの感染経路
http://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/infection_route/

緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康)
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper…
特に夏場、高温多湿になる日本では加湿のしすぎは感染の可能性が高まります。
【飛沫感染は2m離れると感染しないとされている。オープンエアでは,2mまで到達する前に,種々の大きさのaerosol(エアロゾル,微小な空気中で浮遊できる粒子)は乾燥する。60~100μmの大きな粒子でさえ,乾燥して飛沫核になり,インフルエンザウイルスを含む多くのウイルスは乾燥して感染性を失う。したがって,コロナウイルスはインフルエンザ同様,エアロゾルが乾燥する距離である2m離れたら感染しないと思われる。しかし,湿気のある密室では空中に浮遊するエアロゾル中のウイルスは乾燥を免れるため,驚くことに,秒単位から1分ではなく,数分から30分程度,感染性を保持する。 】と 白木公康 先生はおっしゃっておられます。

空気感染ではなくエアロゾル感染の危険性はこれらをご参照下さい。
https://www.ja-ces.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/2b5acf6de10b3226aa88c2eb0b4cb231.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/000631552.pdf https://anesth.or.jp/img/upload/news/cb72269d596637cba065542e74178803.pdf http://www.japanpt.or.jp/upload/branch/jsrpt/obj/files/Respiratory%20physiotherapy%20in%20patients%20with%20COVID-19%20infection%20in%20acute.pdf https://www.carenet.com/news/general/carenet/49754

ウイルスではありませんが、エアロゾルで有名な常在菌の集団感染事例です

1976年、アメリカ合衆国ペンシルベニア州で起った在郷軍人病はエアロゾル感染でした。ペンシルバニアで米国在郷軍人会の大会が開かれた際、参加者と周辺住民221人が原因不明の肺炎になり34人が死亡しました。
新種のグラム陰性桿菌が患者の肺から多数分離された。発見された細菌は在郷軍人(legionnaire) にちなんで Legionella pneumophilaと名づけられました。在郷軍人会の大会会場近くの建物の冷却塔から飛散したエアロゾルに起因していたとされています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%83%A9   
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html

新型コロナウイルスだけではなく感染症は他にもあり、日本は今でも結核の中蔓延国です。年間1.5万人の方が罹患し、1500~2000人の方が亡くなっています。
https://jata.or.jp/dl/pdf/common_sense/2019.pdf
さらにwith coronaの時代になってしまいました。

正しく恐れてこの騒動を乗り切りましょう!

ニセ科学にはご注意下さい!

有名なニセ科学 波動界の陰陽師たち
https://yoshimuraladiesclinic.everyda…

EM菌
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%…

水素水
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-…

磁気発生装置
https://nazomizu.com/

ちなみにニセ科学ではないですが、次亜塩素酸作成の違いで安全な次亜塩素酸水があるとの言説もあります。しかし、強酸でも、弱酸でも 殺菌剤として食品に洗浄に使われている物質には大なり小なり組織酸化性(毒性)があります。 ヤフー知恵袋には色々と載っておりますね。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp…


*こちらもご参考に*

手洗いの父センメルワイス物語と見えない病原体の対処法
https://yoshimuraladiesclinic.everyda…

風邪のウイルス
https://yoshimuraladiesclinic.everyda…

重症急性呼吸器症候群 (SARS)&新型インフルエンザ&中東呼吸器症候群(MERS)のこと
https://yoshimuraladiesclinic.everyda…

COVID-19 (新型コロナウイルス肺炎)について
https://yoshimuraladiesclinic.everyda…

医学は進歩し続けます❗ COVID-19を正しく恐れましょう🎵
https://www.youtube.com/watch?v=rByoD…

今、医療崩壊を避けるための私たちができる後方支援支援🎵 防げる病気はワクチンで防ごう‼️
https://www.youtube.com/watch?v=LCnMO…

COVID19について思うこと
https://www.youtube.com/watch?v=R6V3-…

関連記事

コメント

  1. 次亜塩素酸水の噴霧について色々調べている中でこちらのサイトを拝見しました。
    ご指摘する点は理解できるところもありますが、記載したURLでの見解について
    別途機会を設けて反論等があればお聞かせいただけると幸いです。

    • コメントありがとうございます。

      NITEの電解水噴霧への批判には根拠がない
      https://ameblo.jp/qpfs/entry-12601060932.html
      拝見させていただきました。

      『塩素濃度については環境基準があっても 次亜塩素酸については基準がない。
      その通りではあるが 安全性評価というものの基礎データは 
      すべて 有作用量をこえた死亡・後遺症発生事件をもとに算出されているので 
      事件が起きていない次亜塩素酸では 塩素濃度の援用以外に 環境基準を設定する科学的な手段はない』

      記載のURLのブログ主は上記のような考え方をされているようですが、この考え方をされている以上ブログ主さんとは
      意見の一致をみることはないでしょう。

      ①私のブログにすでに書いているように肺は気相と液相が接してガス交換をする臓器のため、細胞を障害する
      物質に関しては将来的に何かが起る可能性があります。そのため、不特定多数が出入りする空間に次亜塩素酸水を
      散布するのは危険であること(次亜塩素酸水に耐性がある人もいれば感受性の高い人もいる)

      ②ミストが長期間漂う空間は飛沫核感染が注目されている新型コロナウイルスにとって有利な環境となること

      この2点についてURL記載のブログ主は回答を持っていませんし、「事件が起きていない次亜塩素酸」ということで
      事件がおきなければいいと考えています。

      私が医者である以上、その考え方には同意はできません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP