日常から医療の話まで院長の徒然日記

エタノールアルコールの手指消毒剤がないならIPAを使おう!

アルコールにも沢山の種類があります。もともと、炭化水素の水素原子の部分が水酸基(-OH)になっている状態のものをアルコールと呼ぶので、炭素数で呼び名や性質が異なります。まずは高校時代の化学の復習です。

OH基につく炭素(C)が一つのものは「メタノール」と言います。

こちらは、燃料用アルコールとして使われることが多いです。揮発性が高く、細胞毒性が強いので、飲用や消毒には絶対に使わないで下さい。

経口での最小致死量は0.3-1.0g/kg程度でエタノールの10倍危険です。

3種類の製造法がありますが、現在は 天然ガスからの製造が主流です。

1.木材由来による木酢液の蒸留(”木精”という名の由来)。
2.石炭ないし天然ガスから発生した一酸化炭素(CO) に水素(H2) を反応させて工業的に生産
3.メタノール産生菌による発酵。

エタノールとメタノール、一見「CH₂」が増えただけの違いのようですが、メタノールが消毒用途に使われないのはエタノールの10倍以上危険性が高いためです。高校で「メタノールはメチルアルコールの別名で目散るアルコールと覚えよう」なんて化学の先生は言ってませんでしたか?

皮膚についても強い刺激はありませんが、速やかに大量の水で洗い流してください。脱脂作用も強いので水で洗い流した後は保湿クリームなどで皮膚ケアもお忘れなく!

OH基につく炭素(C)が2つのものは「エタノール」と言います。

比較的人体に安全なアルコールで工業用から飲用まで幅広く使われています。また、比較的安全性が高いので溶剤(有機溶媒)、有機合成原料や消毒剤として広く使われています。

工業用発酵アルコールのうち、天然の原料から作った発酵アルコールは食品の防腐用、みりんや酒などの調味料の原料に使用されます。また化学合成された合成アルコールは接着剤、インク、塗料、農薬などに使用されます。

使用量は、2006年で飲用8%・工業用15%・燃料用77%と以外に燃料用が多いようです。

OH基につく炭素(C)が3つのものは「プロパノール」と言います。

アセトン合成の中間原料やグリセリンの合成原料として用いられます。キシレンなどの有機溶剤にくらべ環境負荷も小さく、印刷用・文具用インクの基材にも使われます。さらに洗浄液として湿式のヘッドクリーナー、CDBDレンズクリーナーのクリーニング液、複写機のガラスやコンタクトレンズの洗浄液、 速乾性で 油脂類の親和性が高いので機械部品の洗浄としても人気が高いようです。

医療機関では消毒用として、エタノールと同様に使われます。ただ、エタノールと比べて脱脂作用が強く、やや毒性と刺激性が強いため注意が必要です。手指消毒には使われますが、創傷面や損傷皮膚への使用は避けましょう。

石油の精製時に発生するプロピレンガスを水和反応(水分子付加反応)して作ります。  

C₃H₆+H₂O→C₃H₃CH(OH)CH₃

OH基につく炭素(C)が4つのものは「ブタノール」と言います。

有機化学や繊維生産過程で溶媒や化合物生産の原料として幅広く用いられています。また、塗料用シンナーとしてカラー塗料等にも使われます。

ブタノール類の多くは石油・石炭から生産されます。

以上、4種類のアルコールを紹介しましたが、手指消毒に使われるのは、エタノールとイソプロピルアルコールの2種類だけです。

毒性はエタノールの方が低いので医療現場での消毒に最近ではエタノールがよく使われるようになってきましたが、新型コロナウイルス騒動以来、手指消毒のエタノール需要が高まり、エタノールの供給不足を起こしています。

イソプロピルアルコール(イソプロパノール)消毒に対する効果と安全性では臨床の現場の使用実感としてはエタノールとの性能差はほとんどないと思います。だから、エタノール不足の今だから少しIPA(イソプロピルアルコール)に注目してみましょう。

エタノールとほぼ同等の消毒効果を示すものの、親水性ウイルス(ノロウイルス、アデノウイルスなど)に対する効果はエタノールに比べて劣っていると言われています。

手指消毒剤として70vol%イソプロパノールはエタノールより手荒れが生じやすので5%ほどグリセリンを混ぜると揮発性も抑えられ、保湿効果もあるので、合がよく行われます。さらに、エタノールよりイソプロパノールのほうが安価です。

20~30年程前の医療現場ではアルコール系消毒剤と言えばイソプロパノールでしたが、2001年4月に日本においてアルコール事業法が施行され、旧アルコール専売法における規制が一部緩和されました(酒税の廃止)。そのため、エタノールを主成分とする消毒薬の開発と市販化の可能性がそれ以前よりも拡大しました。さらに新しいタイプの医療用エタノール系消毒薬も市場に出回るようになりました。

両者の有効性比較

アルコール系消毒薬はすべて、多くの一般細菌と酵母菌に対して優れた速効性を示します。ただし、揮発などにより濃度が低下した場合には、同じ濃度であれば、イソプロパノールの方がエタノールより短い時間で効力を発揮する場合もあります。

しかし、アルコール系消毒剤は糸状菌に対して比較的長い作用時間が必要で、こちらはエタノールの方がイソプロパノールより短い時間で効力を発揮する場合があります。エンベロープを有するウイルスに対しては、どちらも速効性を示します。

ノロウイルスなどエンベロープを有しないウイルスに対しては、どのアルコール系消毒薬も長い作用時間を必要とし。塩素系消毒剤の方が高い失活力を持ちます。

アルコール系消毒薬が繁用される目的は主に一般細菌の消毒であると思われます。このような観点からすると、エタノールおよびイソプロパノールアルコール系消毒薬のどれを選択しても、正しく用いれば十分な有効性を発揮すると考えられます。もちろん、今話題の新型コロナウイルスもエンベロープを持つウイルスなので有効に作用します。

両者の安全性の比較

エタノール系製剤の方がイソプロパノール系製剤よりもLD50値が高く、低毒性であると言えます。一般的には2倍と言われていますが、それほど大きな差異があるとも思えません。日本においてもイソプロパノールを繁用している医療機関は今でも多数存在します。イソプロパノール特有の毒性が臨床的な問題となり、エタノールへの変更で解決したという話もありません。

もちろん、両者とも少ないとは言え消毒剤ですから身体に毒性があることは明らかです。肺は繊細な臓器ですから患者や医療従事者が吸入することなるべく避けなければなりません。さらにアルコールには引火性があるため取り扱いには注意が必要です。

その他の特性の比較

イソプロパノールはエタノールと違った異臭があり、エタノールよりもその異臭感をを選択する上で実務的な問題となる事項としては、エタノールからの切り替え時における異臭感があると思われます。この匂いは好き嫌いが分かれますが・・

医療現場における手指衛生のためのCDCガイドラインhttps://med.saraya.com/gakujutsu/guideline/pdf/h_hygiene_cdc.pdf

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP