序章 ‘忘れられた’史上最悪のインフルエンザ 人類とウイルスの世界戦争 歴史を知り今回のウイルス戦に勝利しよう!
21世紀に入り自然災害は依然として人類に襲いかかっています。しかし、人類はそれに対して「減災」で被害を最小限に食い止めるしかありません。
2006年に出版されたこの本の著者、速水融先生は経済史・歴史人口学を専門とする歴史学者です。惜しくも2019年12月に急逝されました。
アメリカの歴史学者であるアルフレッド・W・クロスビーが1989年にAmerica’s Forgotten Pandemic: the Influenza of 1918, (Cambridge University Press, 1989, 2nd ed., 2003).
「史上最悪のインフルエンザ・忘れられたパンデミック」を出版しているように、この『忘れられた』というキーワードは世界中で共通です。
世界人口が20億足らずであった当時、スペインかぜの死亡者は世界で2000万~1億人、現在の世界人口で換算すると7000万~3.5億人
当時の人口が5500万に日本で20万人以上が2年の間になくなった計算となります。
第一次世界大戦の戦死者が約1000万人といわれていますから、このスペインかぜ20世紀最悪の人的被害をもたらしています。
しかし、世界戦争や日本で言えばその4年後に起った関東大震災の記録のほうが圧倒的に多いのが事実です。
筆者は日本におけるスペインかぜの資料を集め、歴史学者の使命としてこの本を執筆しました。
【=私の解説に興味をもったらぜひこの本を手にとって読んでほしい=】
読み込めば読み込むほど現在の新型コロナ騒動は
何が問題なのか我々が何をすべきなのかがわかると思います。
日本を襲ったスペイン・インフルエンザ「人間とウイルスの第一次世界戦争」
速水 融 著:藤原書店
第三章 変異した新型ウイルスの襲来ー1918(大正7)年八月末以降
アメリカ
港町で変異したウイルス/欧州派兵とウイルス/
ディベンズ基地で猛威をふるったウイルス/
米軍戦没者の八割はインフルエンザによる病死か?/
当時の状況を描写した詩文/
文学に記されたインフルエンザと体制への増悪/
アメリカ国内での感染の広がり/有効は1918年に限らない/
少なめに算出された死亡者数/パニックに陥ったアメリカ社会/
戦勝気分に酔うその足元で/貧富の違いによる被害の違い
イギリス
最大の被害をもたらし第二波は六週間でイングランド全土に/
突出した壮年層の死亡者数/3つの流行拡大パターン
フランス
アメリカ軍、フランス軍、イギリス軍の順に感染拡大/アポリネール症候群
補遺
第四章 全流行ー大正7(1918)年秋ー大正8(1919)年春
本格的流行始まる
前流行と後流行/従来の記録よりも多い実際の死亡者数/
スペインインフルエンザウイルスはいつ日本に襲来したか?/
軍隊・学校が流行の起点に/3週間のうちに全国に拡大
九州地方
初期の報道ー「ブタ・コレラ」、海外の状況/罹患者の急増/
都市から周辺部への感染拡大
中国・四国地方
10月末以降、死亡記事が急増/
「予防心得」、氷の欠乏、医療体制の不備、晋平の罹患/
比較的軽かった中国地方での被害?
近畿地方
被害の大きかった京都・大阪・神戸/地域によって異なる流行の再発/
中国地方
大都市より中小都市・郡部で蔓延/11月に入り、死者増加/
後になるほど悪性を発揮/被害が大きかったのは製糸業地帯/
「鶏の流行感冒」/人口1000名中、970名罹患、70名死亡の村も/
生命保険加入推進のチャンス
関東地方
新聞は意図的に報じなかった?/初発以来数十万人が罹患/
インフルエンザと桂庵の不足/記録に残された五味淵医師の奮闘/
前年秋を乗り切った人々が罹患/東京府・東京市の対応・
報道にみる被害の実態
北海道・奥羽地方
他地方より遅れた初発、その後の状況の悪化/鉄道が伝染経路に/
郡部で長引く流行/被害が比較的軽かったと言われる北海道/
村全滅の例も
第五章 後流行ー大正8(1919)年暮ー大正9(1920)年春
後流行は別種のインフルエンザか?
前流行と後流行の症状の違い/前流行と後流行の間の状況
九州地方
後流行の初発/「予防の手なし」
中国・四国地方
罹患者の二割が死亡/地獄絵を見るような10日間/軍隊内での流行
近畿地方
最大の死亡者を出した地域/年が改まり、死者がさらに増大
中部地方
抗体をもたない初年兵に多い罹患/2月に死者増大のピーク/
郡部で猛威ふるう
関東地方
初めは軍隊から/地獄の3週間・一割強の死者/鉱山町での大きな被害
北海道・奥羽地方
軍隊が流行の発生源/秋田県で最小、福島県で最大の被害/
交通の要衝地での感染拡大/北海道での惨状
小括
第七章 インフルエンザと軍隊
「矢矧」事件
最高級の資料/上陸許可後に直ちに罹患/緩慢な病勢進行と急速な感染拡大/
すでに罹患していた「明石」の乗組員/マニラ到着後の安堵/
死者続出の惨状/階級による差/症状に関する克明な記録/
同じように襲われた他の軍艦・商船/「矢矧」の帰還/
ピーク後も未感染者に活動場所を見いだすウイルス
海外におけるインフルエンザと軍隊
地中海派遣艦隊を襲ったインフルエンザ/シベリア派兵とインフルエンザ
国内におけるインフルエンザと軍隊
陸軍病院の状況/各師団の死亡者数/海軍病院の状況/新聞報道
小括
第八章 国内における流行の諸相
神奈川県
豊富な資料/流行の時期/流行の初発/死者の増大/いったん終息。その後の再発/
後流行の猛威/与謝野晶子が感じた「死の恐怖」/二つの貴重な統計/
僻地で高い罹患率/都市部と農村部の違い/郡部で罹患者死亡率の高かった後流行/
前流行と後流行の相関関係/1920年1月における死者の激増
三井物産
『社報』も語る死者の増大/社員家族を襲った悲劇
三菱各社
流行期の上昇している社員の死亡者数/鉱山など生産現場に多い犠牲者
東京市電気局
罹患者の多かった「春の先触れ」
大角力協会
「角力風邪」/「先触れ」でえ免疫を得た力士
慶応義塾大学
民間における青年・壮年層の被害の実態
帝国学士院
罹患と外出忌避による欠席者の増加
文芸界
犠牲者/文学作品
日記にみる流行
原敬日記/秋田雨雀日記/善治日記
第九章 外地における流行
樺太
漁期に流行/最も高い対人口死亡率/先住民にも多くの死者
朝鮮
内地と同時に流行/死亡率の高い後流行/行政は何をしたのか?/
免疫現象の確認/統計資料の問題/朝鮮での前流行の犠牲者は約13万人/
朝鮮での死者の累計は約23万人/三・一運動とスペイン・インフルエンザ
関東州
本地人により大きな被害/関東州でも死亡率の高かった後流行
台湾
台湾中に広がり先住民も罹患/台湾でも軍隊を起点に流行/
本地人と内地人(日本人)の間の被害の差/
死者は多いが、短期間で過ぎ去った流行/先住民の被害
小括
終章 総括・対策・教訓
総括内地45.3万人、外地28.7万人、合計74万人の死者/日本内地の総人口は減少せず/
流行終息の第一次「ベビーブーム」/なぜ忘却されたか?
対策
人々はインフルエンザにどう対したか?/謎だった病原体
教訓
あとがき
資料1:五味淵伊次郎の見聞記
資料2:軍艦「矢矧」の日記
【新型コロナウイルスデーターを読み解きましょう!】
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